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AIは医療判断不要の業務を大量に迅速処理し診断・経営に貢献する

井元 剛(いもと・つよし)1979年東京都生まれ。高校卒業後、コンピューター専門学校に入学。2001年WEBシステム会社に入社。その後、フリーランスとして、ヤフー、楽天、DeNA、経済産業省など数々の企業や官庁でシステム開発に携わる。16年Ai開発を専門とする9DWを設立し代表に。国立大学との共同研究を締結。Aiの講演も多数行う。

将棋やチェスなどのボードゲームで人類最強とされる選手を打ち負かし、ここのところ広く注目されているAI(人工知能)。第3次ブームにあると言われ、医療分野においても、その活用が期待されている。臨床の現場や病院経営、研究分野で、具体的にはどのように活用出来るのだろうか。世界トップレベルのAI開発集団である株式会社9DWを率いる井元剛氏に話を聞いた。


──AIの開発を手掛けるようになったきっかけは?

井元 子供の頃、両親はパソコンを使わなかったにもかかわらず自宅に高価なパソコンが1台あり、1日中そのパソコンで遊んでいました。ファミリーコンピューター全盛期で、この時代にインターネットも出て来ました。中学校では3年生の頃からパソコンの授業が始まり、その面白さにますますのめり込んでいきました。この頃から機械に自動で仕事をさせてみたいと考えるようになっていました。当時のパソコンの処理能力ではAIを開発出来なかったことから実現化は無理でしたが、今思えばこれがAI開発に興味を持った瞬間です。その一方で、中学生の頃から空手などの武術を習っており、師匠から身体の合理的な運用方法を学ぶことでロジカルな思考方法を獲得することが出来ましたし、力の正しい使い方を学ぶことで技術というものは使い方で良くも悪くもなることを実感することが出来ました。この経験が、AIシステムという強力な技術を正しく使うための開発指針となっているのだと思います。

──AIによって医療はどう変わっていきますか。

井元 現在の医療現場においては、医師をはじめとする医療従事者の方々の過剰労働が問題になっています。また、僻地医療の人員不足問題も少子高齢化社会が進む中でますます大きくなっていくでしょう。私達は、医療にAIが導入され、これらの諸問題を解決する助けとなることを期待しています。高久史麿先生(日本医学会前会長)との対談の中で、高久先生は「AIが医師をサポートする仕事を担うことで最高の組合せになる」とおっしゃっていましたが、その通りだと思います。

これからの時代は、病院運営にAIが導入され、業務を効率化するようになっていくと予想しています。医療従事者の方が持つ多種多様な業務のうち、データの読み取りや患者さんへのレポート作成など、高度な医療判断を要しない業務なら十分にAIが担えると考えています。その他、患者さんのデータを自動的に整理し、個人の病歴や自覚症状等の情報を含めたデータとして、医療従事者の方の手元に届くようにすることも可能です。また、過去の膨大なデータを学習済みのAIに個々の患者さんの初診時の問診内容を入力すると、複数の所見を医師の方に提出するようなAIを開発すれば、医師の方はAIが並べた疾病候補を参考に、自身の判断を加味した診断を下すことが出来ます。

深夜の救急外来など、専門の異なる医師の方が診断を担当したとしても、このようにAIを使用すれば、患者さんが迅速かつ信頼性の高い処置を受けられる可能性が高まります。その他の新たな活用事例の展望としては、既存の処方薬の作用・副作用の過去データを学習させることで、新しい組合せから新たな効能を見つけ出すことがあります。この技術が実現すれば、複数のクリニックから処方された薬を飲んでいる患者さんに生じる作用・副作用を分析するなど新たなビジネスへと展開することも出来るでしょう。

診断の速度と信頼性を高められる

──AIは診断にも活用することが出来ますね。

井元 画像診断の業務では、CT・MRI装置の発明によって読影する画像の枚数が膨大となり、医療過誤の防止並びに医療従事者の方々への人間工学的配慮という観点において大きな課題であると言えます。高度な読影能力を持つ専門家であっても、心身の限界を超えるような作業量では、良いパフォーマンスを発揮することは出来ません。このような状況においてAIによる画像診断の補助があれば、人間にはるかに勝る速さで画像を読影し、疾病が存在する箇所の候補を医師の方に伝えることで、作業量を軽減することが出来ます。

このようにして、病院運営と同様に、AI活用によって診断の速度と信頼性を高めることが出来ると考えています。この画像診断AIを作るには何が必要かと言うと、AIに画像診断の専門家による診断データを取り込ませ、学習させていくことです。この時、画像診断データが正確であればあるほど、優秀な画像診断AIとしてのスタートを切ることが出来ます。学習機能があるAIはその後、順次新しい画像を処理しながら学習し、自律的に診断能力を向上していきます。

画像データ以外についても、健康診断データから疾病の予見が出来ると考えています。例えば、特定のデータ傾向を持つ人は3年後にがんになる可能性が高いと分かれば、健康診断のデータ傾向を変化させるような生活習慣のアドバイスを生成することによって、予防医学の領域への応用が可能になります。これらのAIによる診断において注意すべきことは、そのAIに成長する機能があるかどうかです。いくら画像診断を繰り返させても、自動学習する能力が備わっていないAIでは、診断能力は初期の性能から変わることがありません。

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