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OPINION

災害時に生かされる「地域医療連携」

日本病院会熊本県支部長、済生会熊本病院院長 副島秀久(そえじま・ひでひさ)

1949年福岡県生まれ。75年熊本大学医学部卒業。81年同大学大学院修了、泌尿器科助手。86年米ミシガン大学腎生理学教室留学。88年熊本大学医学部泌尿器科講師、89年済生会熊本病院人工透析科医長、同病院腎泌尿器センター部長、同病院副院長兼TQMセンター長を経て、2009年同病院院長。10年熊本県済生会常務理事。現在、日本クリニカルパス学会理事長、日本病院会熊本県支部長などを務める。共著書に『健考本─病気やってる場合じゃありませんよ』『変化の時代に対応するクリニカルパス』『医療記録が変わる!決定版クリニカルパス』など。


~ニーズに合わせることで機能分化と連携を実現~ 熊本地震に見舞われた済生会熊本病院は、救命救急を担当する急性期病院として、通常の10倍に膨れ上がった救急患者に対応した。地域連携のネットワークを使って病床を空け、救急患者を受け入れ続けたのだ。医療連携が機能した要因は何か、なぜ済生会熊本病院は震災直後からフル稼働できたのか。副島秀久院長に、熊本地震の経験を踏まえ、災害医療と地域医療連携の関係について語ってもらった。

——熊本は医療連携の先進地域といわれます。

副島 市の中心に熊本大学医学部附属病院がありますが、北側に国立病院機構熊本医療センター、東側に熊本赤十字病院、南側に我々の済生会熊本病院があります。まず、医療センター、赤十字病院、済生会病院のポジションが絶妙なのです。それぞれが災害拠点病院であり、地域支援病院でもあるのですが、そうした病院が街の中心に集まってしまわず、全体をカバーしやすい場所に散っています。これは誰かがレギュレーション(調整)したわけではなく、自然とそうなったのです。実は、もともとは済生会熊本病院も街の中心、熊本城の近くにあったのですが、そこでやっていくことに限界を感じて外に出たいきさつがあります。主に駐車場の問題でした。病床も増えてきて、街の中心では駐車場が不足するので郊外に移ったのです。赤十字病院も同じような理由で外に出ましたが、このことで、それぞれの病院が核となる、現在の理想のポジショニングとなったわけです。

機能分化することで患者は安心する

——無駄が少なくなりそうですね。

副島 主に救急を担う病院の地域が明確になっているので、市内を救急車が交錯して走るようなことがありません。行くべきところは決まっているのです。救急患者を断るとか、たらい回しといったことは、ほとんど起きません。多くの大都市では、病院が街の中心に集まり過ぎていて、どの病院も出ていかないという状況が生まれているのではないでしょうか。受け持つ地域が決まっていて、そこに関しては責任を持つという形が合理的です。

——地域での役割分担もできている?

副島 済生会熊本病院は急性期しかやりません。それは医療センターも赤十字病院も同じです。急性期の病棟に空きができたから地域包括ケア病床を作るとか、回復期病床を作るとか、そういった選択肢はありません。我々がそういう方針を明確にすれば、地域の病院が安心して地域包括ケア病床や回復期病床に投資することができます。地域で我々に求められているのは何か、ということを突き詰めて考えていくと、こういう形になります。中心に急性期病院があって、その周囲に連携病院があって、介護施設があって、在宅がある、という形が自然に出来上がってきました。

——この点に関しても自然にできたのですね。

副島 そうです。上から誰かの命令があったということではなく、ニーズに合わせたら、こうなったということです。熊本の医療連携がなぜうまくいったのかといえば、医療センター、赤十字病院、済生会病院という三つの病院が、それぞれの地域のニーズをうまく捉えることができたからなのです。これが結論だと思います。ニーズに合わせるということは、イコール機能分化なのです。

——地域の人々は済生会熊本病院に何を求めていますか。

副島 我々が守備範囲としているのは、重症かつ緊急の患者さんです。これを明確に打ち出しているので、浸透していると思います。地域の住民にしてみれば、病院の性格が明確になっていれば、それだけ安心感を持てます。いろいろな病院が、そこそこやっていますという状況だと、重症かつ緊急の場合に安心できないし、そもそもどこに行っていいか分かりません。病院機能がはっきり分化していれば、救急車も患者さんの状態に合わせて運んできます。これは社会インフラの有効利用にもつながる話です。例えば、うちには心臓血管外科も脳神経外科もありますが、こういった診療科が、コンビニのようにどこの病院にも存在する必要はありません。こうした科は近くにある便利さよりも、技術水準の高さが求められます。何が求められているのか分かっていることも大切です。

医療の質の管理とに取り組む

——院長としてこれまで力を注いできたのは、どのようなことですか。

副島 副院長時代からずっとマネジメントをやってきたのですが、一貫して行っているのは医療の質の管理と向上を期しての取り組みです。クリニカルパスから始まって、医療のプロセス管理を行うことで、アウトカムを改善させるという取り組みです。データを取る仕組みを作って、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Actionの頭文字を指し、管理業務を円滑に進める手法の一つ)を回してきました。TQM(総合的品質管理)は、医療プロセスだけではなく、感染症対策や経営的なマネジメントにも関わってきます。

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